腹黒王太子の華麗なる策略
その時、月の光でクリスの左胸に黒いものが見えた。

さっきシャメル国王と剣を交えた時に衣が破れたのか、彼の肌が見え隠れしている。

私の見間違い?

でも……確かに黒かったような。

クリスの衣を掴んでガバッと胸元をはだけさせる。

すると、黒いあざが彼の胸に広がっていた。

私があざを見てクリスは一瞬マズイって顔をしたけど、すぐにいつもの余裕顔に戻って私をからかう。

「殿方の裸を見るのは苦手なんじゃなかったかな?」

「このあざ……どうしたの?」

まっすぐクリスを見て問い質し、彼のあざに触れた。

「アンにしてはやけに積極的じゃないか」

わざと私が恥ずかしがるような言葉を言って、クリスは誤魔化そうとする。

「真面目に答えて!」

私が怒ると、クリスは溜め息交じりの声で答えた。
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