腹黒王太子の華麗なる策略
途中誰かに会うことを期待したが、結局誰にも会わずに浴場に着いた。

岩風呂の前までクリスに運ばれると、彼に降ろされた。

モコは私の腕から飛び降りてそのままお湯に飛び込み泳ぎだす。

雨が降ったせいか、インヴァネスの国花のバイオフルールの薄紫の花びらが岩風呂を覆うように浮かんでいた。

おまけに綺麗な満月が私達を照らしている。

とても幻想的だ。

でも……これからの展開を考えると心臓がバクバクしてきた。

クリスとお風呂に入るなんて無理〜!

花びらで肌はそんなに見えないかもしれないけど、裸で入るなんて想像しただけで失神しそう!

じっと岩風呂を見て考え込んでいたら寒気がしてきて、身体がブルっと震えた。

「ここまで来て何を躊躇っている?」

ガチガチに緊張している私を見てクリスは楽しげに笑う。
< 95 / 307 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop