ミンジュンが私を溺愛すぎる件
「ミンジュンは私のたった一人の息子だけど…
私は、あの子の事を何も知らないのかもしれない。
子供の時は、私にしか笑顔を見せない子だった。
でも、大人になるにつれ、生きていく上で大切な事を学び、たくさんの事を身につけたけど、でも人を愛するっていう事だけは身に付かなかった。
母としては、そういう風に育ててしまった事に責任を感じてたし、片親という境遇は思ったよりも深い傷を与えてしまったという事に、ミンジュンが不憫だったり可哀想だったり…
あなたも承知の通り、それは全て私が選んでそうした道…
でも、ミンジュンにとっては、いばらの道だった。
この子は一生恋も知らずに暮らしていくのかと思っていたから、ジノにあなたの事を聞いて正直嬉しかった」
テヒはそう言いながらも寂しそうな目をして、外を眺めている。
「でも、ミンジュンさんのお母様としては、私が日本人だという事がやはりどこか引っかかる…
時代は流れたけれど、まだ、日本と韓国の間には溝があるのは分かっています」
詠美がそう言うと、外を眺めていたテヒはゆっくりと顔を動かし詠美を見つめた。
「親子して、同じ事をしてるから…
何だか、可笑しいやら悲しいやら…」
「…え?」
詠美は意味が分からない。
でも、胸の鼓動が激しく脈打つのが分かった。
「あ~、何だか詠美に話したくなっちゃった…
私以外、誰も知らない事を…」