先輩から逃げる方法を探しています。
お互いにお城作りに凝り過ぎた結果、あっという間に夕方となってしまった。
崩すのにかなり躊躇したくらい両者ともに凄いクオリティのお城を作ったが、そもそも公平にジャッジをしてくれる人がいなかったために引き分けという形で終わった。
それからご飯を食べ、お風呂にも入り、数時間経過しているのだが、まだ私のもやもやとした心は晴れていない。
むしろ、増える一方な気がしている。
こんなんじゃまた先輩に嫉妬だとからかわれる……
「っていやいや嫉妬とかじゃないし…」
外の空気でも吸って気分を変えようと、1人で再び海へと来ていた。
離れた場所では花火をして楽しんでいる人達や座って海を眺めている人達がいる。
そういえば耀先輩「花火を忘れた…」と結構悔やんでたな。
「そこの可愛い可愛いお嬢さ〜ん。どうしてまた夜に1人で外にいるのかな〜?」
誰が来たのかはすぐにわかったが、一応確かめるために振り向くとやはり先輩だった。
何も言わずまた前を向くと、隣に影が見え、その後すぐに先輩の姿が見えた。
「俺に怒られたいのかな〜?」
「そんなわけないです」
「ふーん。じゃ、あれかぁ…俺に構って欲しいんだ?」
「………そんなわけないです」
一瞬不覚にもドキッとしてしまった。
図星…なわけがない。そんなわけないのに。
最近の私は本当にどうかしている。
意識したり、嫉妬したり。
そんなの好きでもないのにするわけがない。
私は先輩のことを好きなんかじゃない…はず。
だって好きになる要素なんてものが見当たらないし。
それに「どこが好きなのか」と聞かれてもぱっと思いつかない。
…そもそも好きってなんだろう。
「翼ちゃん。聞いてる?」
「え?なんですか?」
「部屋に戻ろう。耀ちんが皆でトランプしたいってさ」
そういう…ことか。
先輩がわざわざ外に出て私のところに来たのは耀先輩のために呼びに来ただけであって、先輩自身のためじゃない。