日だまりの雨
不意に出された陽光くんの名前に、少し胸が痛い。




どうせなら、




陽光くんの隣でこうしていたかったかな……。




「面白い?」




とりあえず話題を本に戻そうと、雨音の顔を覗き込んだ。




一瞬わたしと目が合った後、少し口ごもった雨音は何やら言いにくそうにしてる。




「……ない」



「えっ?」



「読んでない……ほとんど」




恥ずかしそうにポツポツと呟く雨音を、怪訝に思って首を傾げれば、




「1か月前に借りたのに……まだ30ページ」




そう言って差し出した文庫本には、ちょうど30ページ目で栞が挟まれていた。




「やっぱり恋愛モノってダメなの?」




雨音のこと知らないのに、やっぱりなんて言うのはおかしいけど、




恋愛モノ好きって風に見えないのは確かなんだもん。




「恋愛モノって言うか……眠くなる。本読んでると……」




言うなり、雨音は困ったような顔でわたしを見てる。




「ぷっ! あはははっ……何それっ」




いっつも文庫本持ってるからてっきり読者家なのかと思ったら……、




全然違うじゃん。
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