契約書は婚姻届
……けれど。

「地方勤務になった」

一足早く社会人になった雪也は地方支社勤務の辞令を受けてきた。

「遠距離っていったって、新幹線で一本だ。
たまに帰ってくる。
だから、大丈夫だ」

「そうだね」

正直に云えば不安しかなかった。
でも、口が裂けたって云えるはずがない。

メッセージでやりとりするたび、ほんとは淋しいくせに隠して強がった。
そんな朋香の気持ちを知っているのか、雪也は毎回、もう少しして暇になったら一度そっちに行く、そう云ってくれた。

しかし、新人で覚えることも多くて忙しく、雪也からの連絡は間遠になっていく。
そのうち、朋香自身も就活に忙しくなってあまり連絡を取らなくなった。

そしてそのまま自然消滅、現在に至る。
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