契約書は婚姻届
「あ、うん。
相変わらず朋香は上手いな」

朋香の声に、慌てて返事をすると雪也は笑った。

雪也が思い詰めたような顔をしていた気がしたが、気のせいだろうか。

「……俺さ。
朋香と別れたつもり、ないんだけど」

「え?」

突然の告白に思わず、聞き返してしまう。

朋香にとって、雪也との関係は終わっていたから。

「だって、ちゃんと別れようとかそんな話、してないだろ?」

「それはそうだけど……」

マイクを置いてテーブルの上に視線を落とす。

なんとなく連絡が途絶えてしまってから一度も、雪也からなんの音沙汰もなかった。
なのにそんなことを云われても。

「俺の中では朋香とは終わってない。
いまでも朋香が好きだ」
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