契約書は婚姻届
「今度、食事に誘ってはどうだろう?
ああ、でも僕は洋太くんに嫌われているから、来てくれないだろうか」

「……云っておきますね」

「朋香?
どうしたんだい、元気がないみたいだけど」

両手で朋香の顔を挟んだ尚一郎がじっと見つめてくる。
その碧い瞳はまるで、心の奥底まで見透かしているようで、思わず視線を逸らしてしまった。

「なんでもないですよ」

「そう?」

自分のことで一杯一杯だった朋香は、尚一郎が意味深に笑ったことを知らない。


 
その水曜も雪也と会っていた。
今日はたまには歌いたいという朋香の希望でカラオケ。

「やっぱりカラオケはいいねー。
……雪也?」
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