契約書は婚姻届
でも、この件があったから、改めて自分の気持ちを知ることができた。

尚一郎が好き。
……家族や親友程度には。

いまはまだこれでいいんだと思う。
焦る必要はない。

自分の気持ちを自覚する機会をくれた点だけ、雪也に感謝しなければと思う。

「尚一郎さんってさ。
結構いい人だよね。
あの、くそじじぃとくそばばぁの孫だなんて思えない」

尚一郎が褒められてるとわかるのか、ロッテの尻尾が嬉しそうに揺れた。

きっと、尚一郎があの祖父母そっくりの性格だったら、いまでも嫌っていたと思う。
もしかしたら、迷わず雪也の誘いに乗っていたかもしれない。
似なかったのはほんと、神に感謝したいくらいだ。

 
しばらく歩くと道に出た。
屋敷から外へと通じる一本道。
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