契約書は婚姻届
「……でもそれで、女の子が不幸になるのは、許せないのよ……」

ずっと高飛車な態度をとっていた侑岐だが、ふと目を伏せてはぁーっ小さく息を吐き出した。
その姿は憂いに帯びていて、朋香の心を不安にさせる。

それに、先ほどから侑岐がなにを云っているのか気になった。
もしかして以前、尚一郎に関わって不幸になった女性がいるのだろうか。

「尚一郎を説得したけど無駄だった。
だから、あなたを説得しようと思ったんだけど、無駄だったわね」
 
ふふっ、淋しそうに侑岐が笑う。

最初は、達之助側の嫌な人間だと思っていた。
けれど本当は、誰よりも自分のことを考えてくれているんじゃないだろうか。

「でも、覚えてて。
達之助おじいさまは残酷な方よ。
あなたが思っているよりもずっと、ずっと。
少しでも無理だと思ったら、迷わず尚一郎と別れなさい。
じゃないとあなたが……」

するり、侑岐の手が朋香の頬を撫で、じっと見つめてくる。
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