契約書は婚姻届
「あー……。
慌ててたから高橋から鍵を奪って、ひとりで来たんだよね……」

ばつが悪そうに笑う尚一郎に、黙って車に乗る。

そんなことをされれば、犬飼はなおのこと心配だっただろう。

けれど。

……そんなに私が心配だったんだ。

そう気付くと嬉しくて、朋香は緩みそうな顔を必死に引き締めた。
車の中ではずっと無言だった。

ちらちらと尚一郎がなにか云いたそうにこちらを窺うが、不機嫌なフリをした。

すでに尚一郎を許していたが、十分反省してから迎えにくると云ったのは尚一郎だ。
どう反省したのかは気になる。

 
犬飼の手配してくれた料亭で落ち合った。
仲居がふすまを閉め、三人になった途端に侑岐が口を開く。

「尚一郎。
朋香を私にちょうだい?」
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