契約書は婚姻届
すぐに感情的になる達之助と違い、尚恭は落ち着いて見えた。
達之助と同じで尚一郎を嫌っているかといえば、そうではない気がする。

その反面、父と息子の対面にしては、酷くビジネスライクにも見えた。

尚恭は尚一郎を、本当はどう思っているんだろう。

「朋香?」

あまりにちらちら見ていたせいか、尚一郎に苦笑いされてしまった。
恥ずかしくなって視線を逸らそうとして、唇に血が滲んでいることに気付いた。

「尚一郎さん、ここ」

「ん? 
ああ」

朋香に指摘されて唇にふれた尚一郎はしみたのか、僅かに顔をしかめた。
 
「唇、噛んだから。
切れたのかもね」

苦笑いする尚一郎に泣きたくなって俯くと、そっと手を握られた。
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