契約書は婚姻届
「はぁっ!?」

父親譲りの洋太の糸目が、人並み以上に見開かれる。
意気揚々と掴まれた唐揚げは、箸からぽろりと落ちた。

「どういうこと!?
なあ、親父!」

「それは、その。
……なあ、朋香。
やっぱり」

やはり、朋香が帰ったあとも明夫は社員たちに詰め寄られ、朋香の結婚取り消しを説得されたようだ。

「くどい!
もう決めたことだから」

経営や技術は頼りになる明夫だが、この件に関しては動揺しっぱなしで頼りにならない。
溺愛してきた娘がいきなり契約結婚、となるとそうなるのも無理もないかもしれないが。

「どういうことなんだよ、姉ちゃん。
俺にわかるように説明して」

「どうもこうも。
契約継続とこの先の融資の代わりに、押部社長と結婚しろって。
もう、婚姻届にサインしちゃったし」
< 27 / 541 >

この作品をシェア

pagetop