契約書は婚姻届
洋太を浴室に追いやりながら、濡れた廊下を拭いていく。

「洗面台の右の棚、一番上。
そこにあるはずだから」

「サンキュー」

台所に戻りながら苦笑いしか出てこない。

調理を再開しようとすると、帰ってきた明夫が勝手にナスの煮浸しを摘みながら、ビールを飲んでいた。

「お父さん」

「すまん、つい」

いつも通りの明夫のほっとしつつも、やはり明日からが心配になってきた。

 
食卓に着くと思いがけないごちそうに洋太は驚いていた。

「今日なんか、いいことでもあったの?
あ、例の契約打ち切りがなくなったとか?」

「あー、うん。
それもあるけど、結婚したんだよねー」
< 26 / 541 >

この作品をシェア

pagetop