契約書は婚姻届
おそるおそる尋ねたものの、にっこりと笑った尚恭に黙ってしまう。
渋みを増した尚一郎にしか見えない尚恭は、無駄に朋香の胸をドキドキさせるからたちが悪い。

「とりあえず、お茶にしませんか?」

「……はい」

尚恭がケーキをサーブしてくれるのはいいが、普通のホールケーキより一回りも二回りも大きなケーキが三つ。
あれをふたりで全部……とかないと思いたい。

ドイツのケーキが日本のケーキよりかなり大きいことは日頃のお茶で理解しているが、さすがにたじろいだ。

「ああ。
好みを聞かず、一番お勧めのものにしてしまいましたが、よろしかったですか」

上目で窺うわんこのような表情に、朋香の胸がきゅんと音を立てた。

日頃の尚一郎と同じ顔、しかも年を重ねるとこうなるのだと想像するとたまらない。

結局、なにも云えなくなって無言で頷いた。
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