契約書は婚姻届
「お金なんていりません。
尚一郎さんが貧乏だってかまわない。
私は尚一郎さんを愛しているから」

「けれど、これでこの先の自分の運命はわかったでしょう?」

「それはっ」

ずるいと思う。
この先、自分の辿る道が絶望でしかないことがわかっていて、それを望むのはただのドMだ。

けれど、それでも。

「私は尚一郎さんをひとりにしないと約束したから。
ずっと一緒にいるって……」

テーブルクロスの上にぽたぽたと水滴が落ちてくる。
こんなことで泣いているなんてみっともないとは思うが、涙は止まらない。

「……朋香を泣かせないでいただけますか」

鋭利なナイフのようにふれると切れてしまいそうな声に視線を向けると、いつからいたのか、冷ややかな視線を尚一郎が尚恭に送っていた。

「どうやって入ってきた?
私は許可を出してないが?」
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