契約書は婚姻届
「万理奈。
ひさしぶ……」

「いやーっ!」

云い終わらないうちに、悲鳴と共に飛んできた枕が尚一郎の顔にヒットし、眼鏡をずらす。

「いやっ、こないで!
いやーっ!」

悲鳴を上げながらベッドの隅で小さくなっている女性の病衣からのぞく、手足の大半はケロイドに覆われている。

「こないで、お願い、こないで……」

膝を抱えてガタガタと震えている女性に小さくはぁっとため息を落とすと、尚一郎は朋香を振り返った。

「行こうか」

「えっ、はい」

病室を出ていく尚一郎に、慌てて一応、女性にあたまを下げて続く。
女性は一度も、朋香の方を見ることがなかった。

「あの、いまのって」
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