契約書は婚姻届
いままで得たノウハウも顧客もすべてオシベのものになってしまう。
それでも、従業員が救われるならいいと社長は考えたようだ。

しかし、最後の条件がどうしても飲めなかった。

それは、社長の娘――万理奈を、押部家に縁のある政治家に差し出すこと。

その政治家はロリコンで児童買春をしているのは公然の秘密になっている。
 

すべてが、云うことを聞かない尚一郎に対する、達之助の制裁だった。

いや、尚一郎への制裁にかこつけて急成長を続ける、目の上のたんこぶを取り除きたかっただけかもしれない。

事実、エルピス製薬は不正などやってなく、証拠はすべて捏造されたものだった。
エルピス製薬の潔白を証明する証言は、マスコミを操作してすべて消し去られた。

「尚一郎なんて好きにならなきゃよかった」

詫びる尚一郎に泣きながら万理奈が云った言葉は、いまも尚一郎の心に深く突き刺さっている。
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