契約書は婚姻届
熱を帯びる瞳で見つめられ、心臓がばくばくと早く鼓動する。

……けれど。

「いま朋香を抱いたらきっと、フランスなんか行きたくなくなっちゃうからね。
だから、我慢するよ」

困ったように笑う尚一郎に笑い返す。
そんなふたりをロッテが不思議そうに見ていた。


いつも通りの朝食をとり、尚一郎を送り出す。

「できるだけ早く帰ってくるから。
なにかあったらすぐに連絡して。
文字通り飛んで帰ってくるから」

「そんなに心配しなくても大丈夫ですよ」

「心配に決まってるだろ。
あのCEOと一緒に暮らすんだよ?
ああ、やっぱり無理矢理でも朋香も一緒に……」

「尚一郎さん!」

朋香の声に、尚一郎の背中がびくんと揺れた。
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