契約書は婚姻届
「朋香の方こそ、無理しないで。
我慢なんてしなくていいから、なにかあったらすぐ連絡して。
それに来週から一週間ほど侑岐が帰国するらしいから、侑岐にも頼って」

「私は大丈夫ですから。
多少のことは耐えられますし。
尚一郎さんの方が心配です」

手を繋いで、夜明け前の薄暗い庭をふたりと一匹で歩く。
ロッテも、しばらくふたりともいなくなるのがわかっているのか、どことなく淋しそうだ。

「早く仕事を片付けないとね、朋香にふれられない禁断症状が出て、発狂してしまうかもしれないんだ。
だから、多少の無理はするよ」

「尚一郎さん……」

見上げると、レンズ越しに視線があった。
少しずつ傾きながら近づいてきた顔に、唇が重なる。

短く、長く。
深く、浅く……。

「……Nicht genuegend(足りない)」

唇が離れると、そっと尚一郎の手が頬を撫でた。
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