契約書は婚姻届
「……」

崩れ落ちそうになる身体を支えたまま、耳元で小さくくすりと笑われると、身体中を熱が駆け回った。



尚一郎が出て行くとすぐに、用意した荷物を持って本邸へと向かう。

尚一郎には何度も大丈夫だ、心配ないと強がってはいたものの、不安がないどころか不安だらけだった。

「本日からお世話になります、朋香です。
ふつつかものですがよろしくお願いいたします」

本邸で朋香を待っていたのは、自子(さだこ)ひとりだった。
達之助は仕事で出ているらしい。

花を活けていた自子は挨拶を返さないどころか、朋香の方などちっとも見ない。
けれどここではこれが普通らしく、すぐに朋香を案内してきた、執事らしき男の連れられて別の部屋へと移動した。

「これに着替えてください」

渡された衣装盆に入っているのは、たとう紙に包まれた……着物。
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