契約書は婚姻届
まるで小さな子供に云い含めるかのように云われ、こくこくと頷いた。

「では、私は出て行きますから。
鍵をかけてくださいね」

またこくこくと頷くと、安心させるかのように尚恭はにっこりと笑って部屋を出て行った。

尚恭がいなくなるとすぐに鍵をかけた。
浴室に入るとさらに鍵を。

ほっとため息をつくと、いい匂いがしていることに気がついた。

「なんの匂いだろ……」

きょろきょろ見渡すと、置かれた、白いバスタブの中に、たくさんのバラが浮いている。

「きれい……」

いそいそと着物を脱ぎ捨て、バスタブの中に身を沈める。
バラの香りを身体いっぱい吸い込むと、少し気持ちが落ち着いた気がした。

「結局我慢、できなかった……」
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