契約書は婚姻届
『朋香!』

「は、はい!」

携帯の向こうから怒鳴られて、びくっと身体が震え、一瞬、涙が止まった。

『落ち着いて。
CEOになにを云われたのか知らないけど、僕はちゃんと、元気で朋香の元に帰るから。
約束する。
だから僕を、信じて待ってて』

「……はい」

そっとなだめるように、尚一郎の手にあたまを撫でられた気がした。
そのせいか、少しずつ気持ちが落ち着いていく。

『今日はもう、なにも考えずにゆっくり寝て。
いいね』

「あの、尚一郎さん」

『なんだい?』

僅かに、尚一郎の声が不安げになった気がした。
きっとまだ、自分を心配しているのだろう。
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