契約書は婚姻届
「じゃ、じゃあ、お言葉に甘えて」

「ありがとうございます。
とりあえず、座ってみませんか?」

ぱっと顔を輝かせた尚一郎に、明夫は戸惑いながら受け取った鍵でドアを開け、シートに座った。

「おっ、これは」

最初はあきらかに困惑していたが、元々欲しかった車とだけあって、次第に明夫は興奮していく。

「いいですな、これは」

「お父さん」

小さな声で朋香がたしなめると、明夫は険しい顔を作ったものの、そこには残念だとはっきりと書いてあった。

そんな明夫に朋香ははぁっと小さくため息を落とした。

「とにかく。
こんな高価なもの、いただけませんから」

「どうしてもダメかな、朋香?」

叱られた子供のようにいじけてしまった尚一郎に驚いた。
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