契約書は婚姻届
勝手に服を脱がされて、瞬く間に準備してあった服に着替えさせられる。

クラシカルな、白襟が付いたスモーキーピンクのワンピース。

尚恭の趣味なのだろうか。

準備が終わり、メイドに伴われて部屋を出ようとすると、ピコピコピコ、鳴り出した携帯にメイドの顔を窺ってしまう。

「どうぞ」

「ありがとう」

長く続く着信音が途切れないうちに、携帯を耳に当てる。

「おはようございます、尚一郎さん」

『Guten Morgen、Mein Schatz.
よく眠れたかい?』

「……はい」

くすり、小さな笑い声に顔が熱くなる。

メッセージが既読になったのは先ほどだろうから、誤魔化しようがない。
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