契約書は婚姻届
尚恭の秘書初日、どこから聞きつけたのか、達之助の使いとして藤井がきた。
尚恭の秘書として働くのなら、自分の秘書として働けというのだ。
しかし、きっぱりと尚恭に断られた上に追い返された。

その後もしぶとく、ちょこちょこと藤井を寄越してくる。

「いい加減、諦めてくれないかな……」

朋香の苦悩は、深い。


ソファーの上で膝を抱えて丸くなっていると、一時間ほどして寺本が顔を出した。

「朋香さん、お茶にしましょう?
尚恭社長がケーキを買ってきてくださったから」

「はい」

俯いていた顔を上げる。

うじうじ考えていても仕方ない。
自分はいまできることを精一杯するのみ、だ。
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