契約書は婚姻届
「それに、新婚旅行もまだだっただろう?
たまには旅行したってかまわないだろ」

ちゅっ、再び重なった唇に、甘えるように抱きつく。

達之助からの新たな命令に、フランス滞在は延びていた。
忙しいはずなのにカーテの元を訪れるついでにと、三泊四日のドイツ旅行を計画してくれたのは尚一郎だ。

しかし、大丈夫と云いながらも先ほどから、視線は手にしたタブレットに向いている。

自分のために無理をしている尚一郎に申し訳なく、嬉しくもあった。



駅を出るとカーテが待っていた。

「尚一郎!
久しぶりね」

「元気そうでなによりです、母さん」

尚一郎にぎゅーっと抱きついてきたカーテは、同じ金髪に碧い目をしている。
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