契約書は婚姻届
機嫌が直ったのか、尚一郎の唇がちゅっとふれた。

今日、宿泊する塔の部屋は城内にたった一室しかない部屋で、城を独り占めならぬふたり占め。

「そういえば、この指環っていままでしてたのと違いますよね?
どうしたんですか」

気にはなっていた、どうして違うのか。
いままでのは急場しのぎの仮のもので、正式なものをオーダーするとは前に云ってはいたが。

「母さんから渡された。
代々、ハインツ家に伝わるものをリメイクしたんだって」

「……なんか嬉しいです」

「朋香?」

いくら尚恭と尚一郎が気にしなくていいと云ってくれても、達之助や自子に嫁として否定されるのはつらかった。
けれどカーテからこんなものをもらうと、嫁として認められた気がして嬉しい。

「私ちゃんと、尚一郎さんのお嫁さんになれた気がします」

あがってきた涙を誤魔化すように顔を上げると、尚一郎の手が涙を拭ってくれた。
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