契約書は婚姻届
「僕は仕事に行ってくるから。
朋香はおとなしく寝てるんだよ」

気がついたら夜は明けていた。
身体はだるくてのどが少し、ひりつく。

「……尚一郎さん。
家に帰りたい、です」

「まだダメだよ。
まだ、ね」

手際よくネクタイを結んで朋香に口付けを落とすと、尚一郎は病室を出ていった。
一晩中続いた行為に疲れ、目を閉じる。

……なんで尚一郎さん、泣きそうな顔してたんだろ。



それからさらに一週間、入院した。

「尚一郎さん。
家に、帰りたいです」

何度、同じことを願ったのかわからない。
けれど毎晩、疲れきって気を失うまで求められ、誤魔化される。
さらに決まって、尚一郎の答えはこうなのだ。
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