契約書は婚姻届
「まだダメだよ。
まだ、ね」

泣きそうな顔で云われると、それ以上なにも云えなくなる。

「でも朋香もいい加減、外に出たいよね。
いつまでもこのまま閉じこめておきたいなんて僕の我が儘だ。
……いいよ、退院の手続きをしよう」

退院できるのは嬉しかったが、尚一郎の言葉は引っかかった。

「尚一郎さん?
それってどういう……」

「ごめんね、朋香。
いままで本当にありがとう」

「尚一郎さん?」

ぎゅっと自分を抱きしめる尚一郎の身体は震えていて不安になる。

「なんでもないよ。
今日は退院のお祝いに、大村にごちそうを作ってもらおう。
朋香はなにが食べたいかい?」

「えっと……」
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