契約書は婚姻届
「……おかえりなさい」

玄関に降りるとロッテの歓迎を受けていた尚一郎が、表情を堅くした。

いつもならすぐに
「ただいま」
とキスしてくれるのに、今日はない。

そのうえ、後ろにはなぜかお抱え弁護士の羽山が立っている。

「君に話がある」

普段と全く違う、冷たい顔の尚一郎に、悪い予感しかしなかった。
朋香を書斎に連れていくと、ひとり掛けのソファーに座った尚一郎はその長い足を組み、そのうえに手の指を組んで乗せた。
その左手薬指からは……結婚指環が消えている。

「これを」

羽山がテーブルの上に一枚の紙を滑らせる。
確認するとそれは、離婚届だった。

「……どういうこと、ですか」

ずっと一緒にいると誓ったのだ。
絶対にひとりにしないと約束してくれた。
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