契約書は婚姻届
なのに、なんで。

「結婚ごっこはもう終わりだ」

「……ごっこ、ですか」

「そうだ。
僕が君のような人間と本気で結婚するとでも?
少し、遊んでみただけだ」

うっすらと笑う尚一郎に、背中を冷たい汗が滑り落ちていく。

「……じゃ、じゃあ、いままでのはすべて、演技だったんですか」

「そうだ」

「愛してるって云ってくれたのも」

「すべて嘘だ。
……さっさとサインしてくれないかな」

尚一郎の指がコツコツと離婚届を叩く。
そこにはすでに、押部尚一郎の名前が記入してあった。

「……嫌だって云ったら」
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