契約書は婚姻届
「君が傷つくだろうから云わないでおいてやったが。
偽装するような会社の娘を妻にしておけると思うのか」

ギリ、奥歯を強く噛みしめたせいか、わずかに頭痛がした。

「……わかり、ました」

ペンを取ると離婚届にサインする。
渡された印鑑で判もついた。

「それから」

羽山は離婚届を確認すると、尚一郎の声にあわせてさらに紙を置く。


「今後一切、僕には関わらないとの誓いの書類だ。
慰謝料だなんだと請求されると困るからな」

はっ、吐き捨てるように笑った尚一郎にかっとあたまが熱くなった。

「そんなことするわけないでしょ!?
あなたはいままで、私のなにを見てきたんですか!?」

「……なにも」

レンズの奥の碧い瞳はガラス玉のようで感情が見えない。
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