契約書は婚姻届
しかし実際、達之助はないことをでっち上げて犬飼の父親の会社を潰している。

「ごめんなさい……。
いつ云おうか迷ってた……」

話してしまうと胸のつっかえがとれ涙が出てきて、慌てて顔を拭う。

「だから、尚一郎さんは本当に謝罪したいだけだと思うの。
信じてあげて欲しい」

偽装するような工場の娘は妻にしておけないなどと云っていたが、きっと、あれは尚一郎の本心じゃない。
そうでなければ、工場を救ってくれたりするはずがないのだ。

あの日は態度を急変させた尚一郎に裏切られたと思ったが、自分はなにか見落としているんじゃないか。

尚一郎は自分といるとき、あんなにも幸せそうで嬉しそうだったのだ。

「尚一郎さんを信じてあげて」

それは、朋香自身に向けた言葉だった。
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