契約書は婚姻届
「……このたびは誠に申し訳ございませんでした。
また、和解を受け入れてくださり、ありがとうございます」

「いえ、悪いのは押部会長ではないですので」

「そう云っていただけるとありがたいです」

その後、つつがなく和解の話は終わった。
握手を交わす明夫と尚一郎に、朋香もほっと息をついた。

「じゃあ朋香、帰ろうか」

「え?
でも、荷物とか、なにも準備してないですし」

慌てる朋香にかまわずに、手を掴むと尚一郎はどんどん歩いていく。

「これだけ朋香と離れてて、僕がどんな思いをしてたと思う?
もう、気が狂いそうで仕方なかったよ」

自業自得だとは思うが、黙っておいた。
それに、別れてからもずっと、思っていてくれたのは嬉しい。

「子供はどっちだろう?
男の子かな?
女の子かな?
あ、朋香、そんなかかとの高い靴を履いちゃダメだよ。
転んだらどうするんだい?」
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