契約書は婚姻届
いきなり、ひょいっと尚一郎に抱き抱えられ、慌てて首に抱きついた。

「しょ、尚一郎さん!
下ろしてください!」

「エー、嫌だよー」

すれ違う社員が何事かと朋香たちを見ていて恥ずかしい。

「もう絶対に離さないからね。
朋香もずっと、僕の傍にいてくれるんだろう?」

「嫌だって云っても離れません。
また、離婚して欲しいって云われても、今度は絶対にサインしませんから」

「よかった」

嬉しそうににっこりと笑う尚一郎に朋香も笑い返す。

……今度は絶対に、尚一郎さんをひとりになんてしない。
絶対に絶対に、尚一郎さんを幸せにしてみせるんだ。

駐車場に出ると、車で待っていた高橋がドアを開ける。

「Ich liebe dich von ganzem Herzen(心から愛してる)」

そっと頬にふれる手に見上げると、春の野原のように碧い瞳がじっと見つめていた。
傾きながらゆっくりと近づいてくる顔に目を閉じる。

すぐにバタンと音がして、高橋がドアを閉めた。


【das Ende】
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