契約書は婚姻届
「……はい」

真剣な尚一郎に、そうしなければいけない気がして、朋香は頷いた。


 
正面玄関、ではなく裏口のような所で車を降りる。
屋敷に入ってから尚一郎はずっと無言だ。
それに、顔色も悪い気がする。

「尚一郎です」

通された座敷は何畳あるのかわからないほど広かった。

尚一郎と一緒に下座に座る。
が、上座は遙か遠い。

「本日はお招きいただき、ありがとうございました」

あたまを下げる尚一郎に合わせて朋香もあたまを下げたが、上座に座る老人の男女ふたりはなにも云わない。

「本日、COOは?」

尚一郎が問うと、老爺からじろりと不快そうに睨まれた。

「おまえに質問を許可した覚えはない」
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