契約書は婚姻届
がつっ、尚一郎の眼鏡に皿が当たって落ちる。
投げつけた老爺は顔を真っ赤にしてぶるぶると震えていた。
対照的に尚一郎は、顔を伝い落ちる煮物の汁すら気にせずに眼鏡の位置をなおしただけ。

「私をいくら侮辱されようとかまいませんが、朋香を侮辱することはいくらCEOでも許しません」

「うるさい!
うるさい、うるさい!
こんな結婚、認めないからな!
おまえは、侑岐と結婚すると決まっておる!」

興奮して口から唾を飛ばしながら怒鳴り散らしている老爺は、CEOと呼ばれているのできっと、尚一郎の祖父なのだろう。

そうなると横に座っている老婆は祖母なのだろうが、こんな状況でも淡々と食事を続けていて、朋香は薄ら寒いものを感じた。

「日本では重婚が認められるのですか?
申し訳ありません、私はまだ、日本のことを不勉強なようで。
……だとしても、朋香以外の女性を妻に迎える気はありませんが」

「黙れ、尚一郎!
だいたいおまえなど……うっ!」
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