契約書は婚姻届
わざとらしくとぼけてみせた尚一郎に、老爺はさらに怒鳴ろうとした……が。

バタン!

大きな音がして、一瞬、目の前で怒ったことが理解できなかった。

老爺は急に白目をむいて、後ろ向きに倒れてしまったから。

「えっ!?」

ぐっと堪えてことを成り行きを見守っていた朋香だが、慌てて立ち上がろうとしたら尚一郎に止められた。

「行こう、朋香」

「えっ、あっ、あれ、いいんですか?」

尚一郎に手を引っ張られ、無理矢理立たされて一歩踏み出した瞬間。

「……これだから外人は」

老爺が倒れても黙々と食事を続けていた老婆がぼそりと呟いたのが聞こえてぞっとした。
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