君はガーディアン ―敬語男子と♪ドキドキ同居生活―
 私は、自分の出自を知ってまだ二日しか経過していないが、黄金川財閥の存在は知っていた。民間初の総合物理学研究所を設立し、成果を出し、財を成した、まさに立志伝中の人物と言えるのが、黄金川多喜子。私から見れば、雲の上の天上人のような存在の人が、自分の祖母であり、母と確執があったというのは、まるで夢の世界の出来事のようだ。

「ご自身が『力』をお持ちでなかったからこそ、研究施設に力を入れていらしたようです」

 その結果、津九音市は研究都市となり、一定以上の成果を出している。ならば、祖母のしてきた事は、まったくの無駄ではなかったのではないだろうか。

 むしろ、聖獣召喚による事で、かえって街が危機に晒されているという可能性はないのだろうか。

「祖母と、礼門は、協力する事はできないんでしょうか」

「……そうですね、そうする事が、できれば……」

「礼門自身はどう思っているんですか?」

「素子さんもご存知の通り、奥様が黄金川の家を出られたのも、若の一家が別れてしまう事になってしまったのも、大奥様が原因だと、若は思っています、若から見たら、母と姉を奪ったかたき、という事になりますね」

「……そうか、だから、クソババアか」

 礼門の話を聞くと、私もそう考えてしまう。けれど。

「……直接、祖母と話をする機会を持つことは、できないんでしょうか」

 礼門の話だけで、祖母の行いを決めつける事は早計のような気もする。
 ……できれば、母の話を聞きたかった。母は、どうして一切を私に伏せていたんだろうか。

「……そうですね、若から頼んでいただければ、あるいは」

 ……やっぱり、礼門と、もう一度きちんと話をしないといけないな、私が考え込んでいると、征治さんに声をかけられた。

「素子さんは、若とはまた違った形で聡明な方ですね」

 ……聡明、この間もそんな風に言われたような気がする。征治さんは、少し私をかいかぶっているんじゃないだろうか。
 私が答えずにいると、

「情報を揃えたうえで、ご自分で判断なさろうとしています、……素敵だと、思います」

 赤面して言われると、私も少し恥ずかしくなってしまう。

 こんな風に、褒められる事は今まで無かったような気がする。
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