【長編】戦(イクサ)林羅山篇
正成の布陣
(大御所様は桶狭間の二の舞を演
じるつもりか。それとも自分なら
あんな無様な負け方をしないとお
考えなのか)
「正成、この戦が桶狭間と同じ結
果になると申すのか」
 正成が忠昌の問いで我に帰っ
た。
「はっ。豊臣勢が茶臼山に布陣し
たとなると、この戦、どう転ぶか
分かりません。豊臣勢は決死の覚
悟で大御所様の御首ただ一つを
狙ってきましょう」
「では我らは御祖父様をお守りせ
ねば」
「それはなりません。大御所様の
大軍が混乱すれば若様の部隊もそ
の中に巻き込まれ、身動きが取れ
なくなります。ここは大御所様の
本隊から離れ、向かってくる豊臣
勢の側面か背後から衝くしかあり
ません」
「そうか、あい分かった。正成、
我らの部隊をそなたが最も良いと
思う布陣先に先導せい」
「ははっ」
 正成は忠昌の部隊を家康やその
隣、岡山口に布陣した秀忠から遠
ざけ、前の戦で布陣した河内枚方
に先導した。そこは最前線となっ
ていたが、豊臣勢には忠昌の部隊
を攻撃する余力はなかった。
 豊臣勢は徳川勢に比べ三分の一
程度の兵力で最後の決戦を挑もう
としていた。
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