【長編】戦(イクサ)林羅山篇
天王寺の戦い
 最初に動いたのは徳川勢の本多
忠朝の部隊だった。
 忠朝の部隊は毛利勝永の部隊が
布陣していた天王寺に向かい鉄砲
隊に銃撃させた。これに対して勝
永の部隊も鉄砲で応戦し銃撃戦と
なった。
 勝永は向かってくる鉄砲隊を引
きつけ、一斉射撃させて撃退し
た。これで部隊の気勢が上がり、
勝永は子の勝家と山本公雄の部
隊、浅井井頼と竹田永翁の部隊と
に分け、それぞれを徳川勢の最前
線に出撃させ、自身の部隊も忠朝
の本隊を反撃した。
 忠朝の本隊は決死の覚悟で向
かってくる勝永の部隊に浮き足立
ち、忠朝は討ち取られた。そこに
やって来た徳川勢の小笠原秀政、
保科正光の部隊と勝永の部隊は混
戦になった。
 徳川勢が勝永の部隊に集中し始
めたのを見た茶臼山の真田幸村は
眼前の松平忠直の陣に突撃を開始
し、豊臣勢の大谷吉治、渡辺糺、
伊木遠雄の部隊も後に続いた。
 岡山口の本陣で二手から攻撃し
てくる豊臣勢を凝視していた秀忠
は前田利常、藤堂高虎、井伊直孝
の部隊を出撃させ、本格的な戦闘
を開始した。
 この動きを見た豊臣勢の大野治
房の部隊は利常の部隊を迎え撃
ち、密かに奇襲部隊を秀忠の本陣
に向かわせて秀忠の動きを封じ
た。
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