【長編】戦(イクサ)林羅山篇
道春の帰宅
 京の自宅では四歳になった道春
の長男、叔勝が、この年の十月に
生まれたばかりの次男に母親の亀
を独り占めにされて不満顔だっ
た。そこに道春が帰って来た。
 叔勝はすぐに駆け寄り道春に抱
きついた。
「父上、お帰りなさい、まし」
 笑顔の道春は叔勝の目線にしゃ
がんだ。
「帰ったぞ叔勝、元気であった
か」
「はい。父上、字を教えてくださ
い」
「おお、教えてやろう。じゃがそ
の前にそなたの弟にも会わねば
な」
「父上もですか。もう」
「叔勝は不満か。そなたはもう兄
になったのだ。わしの代わりにこ
の家を守っていかねばならん。そ
なたを父は頼りにしておるのだ。
機嫌をなおしてくれぬか」
「はぁい」
 そこに赤子を抱きかかえた亀が
現れた。
「旦那様、帰っておられたのです
か」
「ああ、叔勝に足止めされておっ
た」
「まあ」
「違います。父上にお話を聞いて
いただいたのです」
「そうじゃ、そうじゃ。さあ、家
に上がらせてくれ」
 道春は叔勝から開放されて家に
入った。
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