【長編】戦(イクサ)林羅山篇
柳川事件
 次の日
 江戸にいた諸大名がすべて江戸
城の大広間に集められ、家光の前
で宗義成と柳川調興がそれぞれの
言い分を述べ合った。
 二人が言い尽くしたところで家
光が静かに話し始めた。
「調興が言うように宗家のしたこ
とは許されざることだ。しかし義
成は亡き父、義智から引継いで間
もなく、もはや慣習となり、それ
に従うしかなかったであろう。本
来、義智を正さねばならなかった
のは家臣である調興、そなたらで
はないか。誠の忠義をはきち違
え、己の利のためにその罪を主君
になすりつけるとは不らちであ
る。よって義成を赦免とし、調興
と改ざんに直接かかわった者らを
罰する。罰は追って沙汰する。以
上じゃ」
 しばらくして調興は津軽に配流
となり、国書の改ざんに関わった
僧侶、規伯玄方は陸中、南部藩に
配流、家老の島川内匠と調興の家
臣、松尾智保は斬罪となった。
 こうした争い事で家光を煩わせ
ることが増え、江戸から離れた地
域の内情を把握する必要があるた
め武家諸法度の見直しをすること
になった。
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