大剣のエーテル

タン!


隣にいたはずの青年が、瞬きをした時には数メートル先にいた。

その手に握られているのは、研ぎ澄まされた大剣。

はっ!と目を見開いた瞬間、レガリア達の頭上に降ってきたはずのコンクリートの塊が、大剣の一撃によって粉々に砕かれた。

思わず腕で頭を覆っていた隊員達でさえ、何が起こったのか把握しきれていないようだ。


(ランバートが、コンクリートの破片からレガリア達を守った…?)


状況を飲み込めた様子のレガリア達は、大剣を肩に担ぐランバートを見つめている。

ランバートは、ふぅ、と小さく息を吐いて声をかけた。


「大丈夫ですか?」


「は、はい」


息一つ上がっていないランバートに、ぱちぱちと瞬きをするレガリア達。

すると、ランバートは一人の男性隊員に視線を止めた。


「その顔のあざ…。もしかして、あなたがロルフが迷惑をかけたお方ですか?」


レガリアの男性はびくり、と震える。

そして、警戒し、噛み付くように答えた。


「だ、だったらなんだって言うんだ。」


悪口を言っていたことに負い目を感じているように聞こえる彼の声は、エーテルを侮辱したことによる反撃を恐れているようにも見えた。

どこか怯えた様子でランバートを見つめる彼。

しぃん、としている中、私達は黙ったまま成り行きを見守る。

事の発端となった隊員を目の前にしたランバートは、静かに翡翠色の瞳を細めた。

すると次の瞬間、ふっ、と頭を下げる。


「すみませんでした。」


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