大剣のエーテル
ぞくり、と体が震える。
ロルフは、淡々と感情を抑えるように言葉を続けた。
「カイが人質に取られた後は、しばらく膠着(こうちゃく)状態が続いたんだ。ランバートは、カイを助け出す方法を必死で探していたが、カイは、“一派の幹部を大剣で斬ってくれ。自分もろともで構わない”と叫んでた。」
(カイさんは、自分を犠牲にして幹部を始末するようにランバートに頼んだってこと…?それほどまでに、追い詰められた状況だったんだ。)
静かなロビーに、ロルフの低い声が響く。
「…ランバートは斬らなかった。いや、“斬れなかった”の方が正しいかもしれねぇ。あいつは大剣の代わりに特殊魔法を使った。カイを捕らえている敵の魔法陣を砕いたんだ。…カイの魔法陣ごと巻き込むような形でな。」
(…!)
かつてのランバートの声が脳裏をよぎった。
“…俺はエーテルになった後、過去に一度だけ、敵以外の人の魔法陣を砕いたことがあるんだ”
“それは、その人を守るためでもあったんだけど…それからは、魔法を使うことが怖くなってさ。大剣でしか戦えなくなった。”
(ルタの診療所で話していたことは、カイさんのことだったんだ。)