大剣のエーテル
青年は、ぱぁっ、と嬉しそうな顔をして私を見た。
「そうそう!俺もこの本、すごく好きなんだ。好きすぎて、翻訳される前の原本を買ったくらい。」
にこり、と笑って手に持つ本を掲げる彼に、私もつられて興奮気味になる。
「それ、原本なの?すごい、外国の文字を読めるなんて…頭いいのね!」
「そんなことないよ。読書くらいしか趣味がなくてさ。それにしても、こんな図書館の隅にあるような古い本を知っているなんて…君も相当の本好きだね?」
ぶんぶん、と頭を縦に振ると、彼は「ふっ、」と笑って言葉を続けた。
「すごい笑顔。俺との出会いをそんなに喜んでくれるの?」
はっ!とした。
“笑顔”
私は、気付かない間に子どものようにはしゃいでしまっていたらしい。
急に恥ずかしくなって、ぱっ、と彼から視線をそらすと、青年は「ごめんごめん、冗談だよ」と苦笑して本を抱えた。
爽やかな風が2人の間を流れる。
お互い何も喋らず、ただ、その風と相手の呼吸を感じていた。