大剣のエーテル

*傀儡師(くぐつし)の正体


《フォーゼルside》


雪が、ふっ、と消えた。

エーテル達が体の力が抜けたように魔力を解く。

呆然と立ち尽くしている様子の彼らに、カイが「ふふ…」と声を漏らして言った。


「残念ですね。屋敷の中にお目当ての幻夢石がなくて。」


あざ笑うかのようなその声に、エーテルの参謀との噂のイヴァンが低く尋ねる。


「…幻夢石をどこに隠した。洋館はフェイクで、この島の地中にでも埋めたのか?」


睨むように細められた琥珀の瞳から、わずかに動揺の色が伺えた。

いつも余裕綽々だったエーテルの団員達が、どうやら焦っているようだ。

俺は真っ黒なスーツの彼に向かって答える。


「地中に埋めるなんて面倒な真似はしない。ここにあった幻夢石は全て、俺が“影”を作るのに利用した。」


「…!」


イヴァンが小さく目を見開いた時、ルタと呼ばれる白衣の軍医が俺に向かって口を開いた。


「そんなわけないだろ。この荒れ地を埋め尽くしていた影はせいぜい4、50。一派が集めた幻夢石全てを使っていたにしては少なすぎる。」


(あぁ、そうだよ。あんたが見抜いた通りだ。だが、俺は“嘘は言っていない”。)


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