大剣のエーテル
ランバートはそんな私を静かに見つめていたが、やがて本を膝の上に置くと、ゆっくり語り出した。
「俺も、誕生日に祝いの言葉をもらえるようになったのは、つい5年くらい前からだったな。」
「え?」
ランバートの言葉に驚いて隣を見上げると、彼は涼しげな顔をしながら言葉を続けた。
「俺の持って生まれた魔法は役立たずでさ。喧嘩もまともに出来なくて。俺はただの人間同然の暮らしをしてきたから、周りとは少し違ってたんだよね。」
「…!」
はっ、とした。
心が、決して逃げることのできない何かで鷲掴みにされたような感覚に陥る。
進むスピードの違う2つの時計の針が、同じ時を刻んで、回り回って再び重なった時のような。
手がかりのなかったパズルのピースが、偶然合わさった時のような。
そんな運命を感じた。
「…その気持ち、分かるわ。私も、みんなと違うから。」
「え…?」
小さく聞こえたランバートの声に答えるように、私は意を決して告げた。
「私は、魔力を持たない“悪魔の子”なの。望まれずにこの世界に生まれた、ただの人間。私は、町の外に出ることを禁じられているの。」