大剣のエーテル


ザァッ…!


冷たい風が、花びらを舞い上げながら辺りを駆け抜けた。

ランバートのミルクティー色の髪がかきあげられ、彼の顔がよく見える。

彼は驚いた表情をしていたが、そこに負の感情は1つも見えなかった。

私は、自分の抱えていたものを言葉に変えて告げられたことで、胸のつかえが消えたような気がした。

ランバートに嘘偽りのない自分を見せられたことが嬉しいのかもしれない。

同じ境遇だからこそ話しても平気だと、そう思えた。

私は、小さく彼に尋ねる。


「…“役立たず”って、どういうこと?魔法は使えるんだよね?」


「そうだよ。でも、俺は攻撃魔法が使えないんだ。」


ランバートは、わずかにまつ毛を伏せて何かを考え込むような仕草をした後、私に尋ねた。


「ノアちゃんは、どうして町から出られないの?」


私は、膝を抱えながら質問に答える。


「町長のダーナさんに止められているの。私のような魔力のない人がいるって知られたら、国中が混乱に陥るって。もしかしたら、何かの研究対象にされて、人として生きられなくなるかもしれないからって。」


実際、今も人として健全な生活が送れているのかと聞かれたら素直に頷けない所があるが、研究室に閉じ込められるよりはマシだ。

ランバートは、翡翠の瞳を揺らして言葉を続けた。


「ご両親は、魔法使いだよね?」


「えぇ、そうよ。父親も母親も、私が生まれてすぐに亡くなったんだけど…。」

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